ある時、諸仏様たちがお釈迦様に使者を送り、このように挨拶されました。
「世尊よ。いかがですか。少病少悩(しょうびょうしょうのう)でおいでになられますか。気力安楽にましますか」
『無病息災』ではなく『少病少悩』とおっしゃられたのがポイントです。
私たちはどうしても「病気をしないことが良いことだ」「悩みがないのが素晴らしいんだ」と思ってしまいます。
けれども仏様たちがお釈迦さまにおっしゃられたのは少病少悩です。
無病ではなく、少ない病い。
悩み無しではなく、少ない悩み。
この少病少悩という考え方が仏教では大切なのです。
仏教の教えでは、人間には「生・老・病・死」の苦しみ(四苦)が誰にも平等に訪れると教えられます。
どれだけ抵抗しようとも必ず病気になってしまうのだから、諸仏様たちはお釈迦様に無病ではなく「少病にあらせられますか?」と問われたのです。(お釈迦様ですら例外にはならないのです)
四苦はどんな権力者であろうとも、お金持ちであろうとも、必ず訪れます。
逃れることはできません。
「どうせ逃げられないなら生きるのを諦めて自暴自棄になってしまえ」と考える方もいらっしゃるかも知れませんが、それは止めてください。
仏教の教えは諦める(断念)ではなく、明らめる(明らかにする)なのです。
真実を受け入れるというのが大切なのです。
人間であるからには生きていれば病気になります。
悩みも出ます。
しかし、それを完全に無くそうとするのでなく少病少悩、ほんの少し気に病んで、ほんの少し悩みましょう。
完全に無くすことは出来なくても、少なく減らすことはできるのです。
病気にはなるし、老いもするし、死にもする。
諦めるのでなく、明らめる。
解ってることに、じたばたしない。
その足掻きがまた、苦しみに変わります。
仏教には厳しい教えもありますが、皆さまには少しずつでも真実を受け入れてもらい、苦しみを減らしていただきたいと願います。
参考文献
のんびり、ゆったり、ほどほどに
佼成出版社 (2019/7/17)
ひろさちや(著)
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