第37回 鸚鵡の話


 

むかし、インドに鸚鵡(オウム)の肉を食べるのが大好きな王様がいました。

 

城の調理場にある籠の中には、たくさんの鸚鵡が入れられ、鸚鵡を太らせるために、鸚鵡たちには毎日豪勢なエサが与えられていました。

 

 

よく太った、美味しそうな鸚鵡を、王様の食事に出すためです。

 

 

ある時、一匹の鸚鵡が気づきました。

 

――この牢獄を脱出するためにはエサを食べすぎて太ってはいけないのだ!

 

『太ってしまえば殺されて調理されてしまう! 御馳走をむさぼる心を止めなければならない!』

 

そして仲間の鸚鵡たちにも言いました。

 

「みんな、しばらく食べるのを止めよう。そうすれば体はやせ細る。少しくらい苦しくとも、これで命は助かるぞ」

 

しかし、目の前に並べられる御馳走を前に、この鸚鵡の提案を聞いてくれるモノは誰もいませんでした。

 

仲間の鸚鵡たちは、御馳走をバクバク食べて丸々太り、どんどん運び出されていきました。

 

しかし、提案した鸚鵡だけは、その日以来、暴食(好き放題にバクバク食べること)を止めました。必要最低限しか食べませんでした。

 

食事を減らした鸚鵡の体はどんどんやせ細り、ある日、籠をするりとすり抜けて、自由へと飛び立つことが出来たのです。

 

 

 

 

この話の教訓は『食べすぎは体によくない』という、単純な意味だけではありません。

 

食事だけでなく、娯楽やお金、健康など、 現代社会はさまざまな御馳走が私たちの目の前にぶら下がっています。とても美味そうなそれらではありますが、バクバクと好き放題食べて、ブクブクと太ってはいけないのです。

 

お金が欲しいと努力する。あくせくし、イライラし、もっと欲しい、もっと欲しいと貪(むさぼ)りの心に飲まれていませんか?

 

楽しい楽しいと、時間を忘れて遊んでしまう。もっともっとと、貪りの心に己を食べられてはいませんか?

 

御馳走は確かに美味しいです。

 

しかし、目の前に並べられた御馳走をバクバクバクバクと考え無しに食べていると、もっともっとと貪りの心に自分自身が食べられてしまうのです。

 

健康になりたい、強くなりたいと運動しすぎるのも考えものです。運動して運動して、気持ち良い気持ち良いと、もっともっとと、貪りの心に支配されれば、やりすぎに気づかず身体を痛めてしまうかも知れません。

 

楽しい、嬉しい、気持ちいい。

 

どんな感情であれ、我を忘れて貪りすぎると、結果的に自分を傷つけてしまうことになるのです。

 

私たちはほどほどに味わうようにしなければなりません。

 

 

貪りを少なくする。欲を減らす。

 

少欲知足』です。

 

欲望を少なくして『足るを知る』心を持つ。

 

うまい!うまい!と、食べ過ぎて、いつの間にか自分自身が食べられていないように、気をつけましょう。

 

 

 

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参考文献

のんびり、ゆったり、ほどほどに

佼成出版社 (2019/7/17)

ひろさちや(著)

 

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