室町時代の禅僧に「一休宗純(いっきゅうそうじゅん)」という方がいました。
「とんちの一休さん」でおなじみの、あの一休さんです。
ある時、旅をしていた一休さん。
村に立ち寄ると、そこで「ぐにゃぐにゃに曲がりくねった松」を見つけます。
一休さんは村人たちを集めて言いました。
「この曲がりくねった松をまっすぐに見たものに、褒美をとらせよう」
それを聞いた村人たち、「やった、褒美がもらえるぞ!」と、
なんとかして曲がった松をまっすぐに見ようと、知恵をしぼります。
片目をつぶって見てみる者、
股の間から顔を出して見てみる者、
寝っ転がって見てみる者、
近づいて見る者、
遠ざかって見る者、
村人たちはさまざまな方法を試しますが、誰一人、松をまっすぐに見ることはできませんでした。
そうこうしていると、大人たちが騒がしいのを聞きつけて、村の子供たちがやってきます。
そして、子供の一人が、曲がりくねった松を指さして言いました。
「うわー、この松、めちゃくちゃ曲がってるね!」
それを聞いた一休さんは、
「見事! これがまっすぐに見るということじゃ」
と、その子供を大いに褒めたそうです。
◇
人間は、つい先入観や思い込みで、物事を考えてしまいます。
そういう「凝り固まった思考にとらわれるな」と、一休さんはこの話で教えてくれているのです。
曲がった松をまっすぐに見ることはできません。
しかし、まっすぐに見ることはできるのです。
思考に惑わされてはいけません。
皆さんも物事を「まっすぐ」に見られるようになりましょう。
それが、仏さまに近づく第一歩になるのです。
参考文献
知識ゼロからの禅入門
幻冬舎 (2011/05/10)
ひろさちや(著)
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