むかし中国の修行道場では、老師の講座が行われる日は、合図として山門に旗を立てていたそうです。
ある時、その旗がパタパタと風に揺らぐのを見て、二人の僧侶が議論を始めました。
一人の僧は「旗が動いている」と言い、もう一人の僧は「風が動いている」と言うのです。
二人はどちらも自分の意見をゆずらず、議論は終わりそうにありません。
「動くのは風ではない旗だ!」
「いや、旗が動いているのではない!風が動いているのだ!」
そんな二人のやり取りを見ていた臨済宗第六祖である慧能禅師は、争う二人にこう言いました。
「風が動くにあらず、旗が動くにあらず、お前たちの心が動いているのだ」
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禅宗では有名なエピソードです。
複雑そうな話ですが、深く考えすぎる必要はありません。
この話から分かることは「私たちの心もまた、風や旗のようにぴゅーぴゅー、パタパタ動くのだ」ということです。
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私たちの心はとても動きやすいのです。
「影響」という風が吹けば、すぐにふらっと動いてしまう。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。
不安だなあ、どうしよう。
怖ろしいな、やめておこう。
苦しいなあ、辛いなあ。
悲しいなあ、うれしいなあ。
心を動かす風なんかに負けない、強い心を持ちましょう。
不動の心。
不動心です。
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八風吹不動(はっぷうふけどもどうぜず)という禅語があります。
どんなの風が心に吹き付けても動かされない!という意味です。
八つの風とは、
利・衰・毀・誉・称・譏・苦・楽です。
利(り)利益を得る。
衰(すい)損をする。
毀(き)陰で悪く言われる。
誉(よ)陰でほめられる。
称(しょう)表だってほめられる。
譏(き)面と向かってけなされる。
苦(く)苦厄によって苦しむ。
楽(らく)楽しくて楽しくて喜ばしい。
自分を傷つけられることだけでなく、楽しいことや、ほめられることもまた、仏教では心の風と呼んでいます。
「一喜一憂しすぎるな。浮かれすぎると足元すくわれますぞ」と教えてくれているのです。
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人間が生きていく上で、様々な風が私たちの心を動かそうと吹きつけています。
今のコロナ騒ぎもそうです。いつ収束するのかという不安もそうです。
人間なので心が動かされることは仕方ありません。
しかし、動かされすぎないように、吹き飛ばされないように、注意しておかなければなりません。
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もしも仏様だったらこのコロナ禍の現状、どうお過ごししていると思いますか?
なんとも動じていませんよ。
縁にしたがい、どっしり静かにいるだけです。
私たちも、この仏さまの心である不動心を育てていかなければなりません。
どんな風にも動かない、強い心を作りましょう。