東光寺の本堂には「覚夢殿(かくむでん)」という額が飾ってあります。
夢から覚める場所、という意味です。
夢から覚める、とはどういう意味でしょうか?
ーー過去は夢、未来は幻。
過ぎ去った過去は夢であり、まだ見ぬ先にある未来は蜃気楼のようにあやふやなものである。
過去も未来も「今」というものに比べれば、とても儚(はかな)いものである。
覚夢殿の「夢」とは、この「過去」という意味も持っています。
過去は今さら変えることはできないし、動かすこともできません。過去とは自分にはどうにもならないものなのです。
昔あんなコトがあった。
とても悲しいコトがあった。
恥ずかしいコトがあった。
苦しいコトがあった。
そういう過去を引きずって過ごしても何にもなりません。
苦しいだけです。
ここに来たら「早く夢から目覚め、前を向きなさい」と、「過去にこだわるのは止めて、今を進みなさい」と、「覚夢殿」とはそういう意味なのです。
◇
「目覚めよ」とは言っていますが、積極的に過去を捨てる必要はありません。
大切な過去は心にしっかり仕舞っておきましょう。
皆さんには過去よりも、もっと大切な、「今」があります。
今日という日の、「今」を大切にしてください。
過去は夢、未来は幻ですが、「今」というものは確かに「今」ここに、存在するのです。
後ろにある過去ではなく、先にある未来でもなく、目の前にある「今」こそを大切にしてください。
過去の夢にも、未来の幻にも振り回されず、ひとつひとつ、一瞬一瞬を、大切に生きてもらえればと思います。